大判例

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東京高等裁判所 昭和32年(う)2502号 判決

被告人 岡本栄次

〔抄 録〕

弁護人の控訴趣意第一について。

原判決が、その認定判示した被告人の所為に対し、貸金業等の取締に関する法律第一八条第一号、第五条、出資の受入、預り金及び金利等の取締に関する法律附則第一一項を適用していることは、所論のとおりである。ところが所論は、右出資の受入、預り金及び金利等の取締に関する法律(昭和二九年六月二三日法律第一九五号、以下新法と略称する。)附則第一一項には、「この法律の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。」と規定しているのであるが、ここにいう「この法律」とは、新法を指すのであつて、新法附則第五項によつて廃止された貸金業等の取締に関する法律(昭和二四年五月三一日法律第一七〇号、以下旧法と略称する。)を指すのではないから、「この法律施行前にした行為」とは、新法所定の違法行為を指すのであつて、旧法所定の違法行為にして、新法においては違法行為として規定していない行為を指すのではないことが明らかである。故に、新法附則第一一項は、新法にも旧法にも違法行為として規定してある行為にして、その行われた時期が昭和二四年六月二三日以後昭和二九年六月二二日までの間である場合には、なお旧法の刑罰規定を適用すべき趣旨であると解すべきところ、旧法第五条の「貸金業者でなければ貸金業を行つてはならない。」旨の規定は、新法にはないのであるから、右新法附則第一一項の規定は、本件には適用がないものというべく、従つて、原判決が本件につきこれを適用したのは、法令の適用を誤つたものであつて、その誤が判決に影響を及ぼすことが明らかである旨を主張するもののように解されるのであるが、しかし、右新法すなわち出資の受入、預り金及び金利等の取締に関する法律附則第一一項の規定は、同法の施行に伴い廃止となつた旧法すなわち貸金業等の取締に関する法律廃止前に行われた違反行為に対しては、その廃止後も、廃止前に行われた違反行為の罰則の適用に関する範囲においては、これを廃止しない趣旨であつて、一旦廃止して更に改めて罰則を設ける趣旨ではないから、右旧法廃止前の行為は、旧法によつて処罰される趣旨であると解すべきことは、最高裁判所判例(昭和二五年(あ)第八九四号、同二六年五月一五日第三小法廷判決及び昭和二五年(れ)第一七八五号、同二六年三月一日第一小法廷判決参照)の趣旨とするところであるから、前示旧法廃止前の行為であることの記録上明らかな被告人の原判示違反行為に対して右新法附則第一一項の適用があることは、当然であるというべく、従つて、原判決が、前示の如く、被告人の右違反行為に対し、右新法附則第一一項及び旧法第五条、第一八条第一号を適用したことは、正当であつて、原判決には、この点につき、所論のような判決に影響を及ぼすべき法令適用の誤があるものということはできない。論旨は理由がない。

(中西 山田 鈴木良)

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